【along with her story】刺繍家 千葉美波子

2016年11月10日
Category - along with her story
Author - H.Bessho

GARGERYが似合う大人の女性アーティストにスポットを当て、リュトンを片手に、思い思いのストーリーを語っていただいています。今回は、渋谷のんべえ横丁の「」で、刺繍家の千葉美波子さんと一杯ひっかける約束ですが、すでに店主の五嶋さんと話がはずんでいる様子です。

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こんばんは!刺繍家の千葉です。アルファベットをテーマに作品をつくることが多く、アルファベットクリエイター・・・って勝手に作ったんですけれど、そんな肩書きも持っています。アルファベットは言葉にもなるし、単体だと人のイニシャルにもなるところに惹かれます。

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心を静め、小さな達成を積み重ねる

刺繍の仕事と聞くとイメージがわきにくいかと思いますが、広告のアートワークや企業とコラボしての商品開発、書籍のための図案制作などの仕事内容はイラストレーターさんとかぶるかもしれません。機械刺繍として量産する場合は、デザインと元になる刺繍制作と合わせて、機械監修もすることが多いです。手の方が使える技法も多く、細部の作りこみがうまくできるので、少しでも手に近づけるよう、工場の方には申し訳ないなというくらい、何度も何度も修正をかけます。

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クロヤギシロヤギという自分のサイトでは作品の販売もしています。自由につくれる作品は表現を試す機会にもなるので、依頼仕事で追われていても、定期的にやろうと意識しています。本当に色んな技法があって、私が使えるのは100種類くらいかな? それをどういうテクスチャーの布にどんな糸で刺すのか、糸の彩度はどのくらいにするのか、何本取りで刺すのか(刺繍糸を何本重ねて刺繍するか)、試したいことは山ほどあります。
<刺繍と手紙 クロヤギシロヤギ> http://kuroyagishiroyagi.com/

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時々させてもらっているレッスンやワークショップもとても好きです。刺繍って瞑想みたいで、すごく心にいいんですよ。時間がかかる分、毎日小さな達成があることもすてきです。仕事や子育てはすぐに答がでなくても、刺繍は確実にできるようになっていく。スペースもいらないですし。

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写真:レッスン風景・・・先日西武渋谷で開催した2時間ほどの体験レッスン。

「好き」を始めて10年目

実は刺繍歴と仕事歴がほとんど同じなんです。気がついたら仕事になっていて、必死で勉強しながら走って来たという感じです。しかもよく考えてみたら、今年で10周年かも! ど忘れしていました。(笑)

好きなことを仕事にできるっていいね、とよく言って頂きますし、自分でもとても恵まれているな、大切だなと思える職業ですが、もともと不器用で、針仕事は大のニガテ。布と布はボンドで貼ればいいと思っていたくらいです。それがある時ふと、「刺繍のバッグが欲しい」「なんか作れる気がする!」と思ったんです。無謀ですよね。ただ、何も知らなかった強みというか、本当に作れてしまった。

その時のバッグを持っていたら、「それを売ってほしい」と言ってもらえたり、写真をサイトに載せたことがきっかけで仕事が来るようになりました。インターネットってすごい! と感じましたね。と同時に、ヤバい、まだそんなに刺繍できない・・・といつもドキドキしていました。

最初の著者本「アルファベットの刺しゅう手帖」のお話を頂いたのも、まだそんなには刺繍のことを知らなかった頃。今見返すと、未熟なところが目について、恥ずかしいというか、でも愛おしいというか。撮影のときは高熱が出て朦朧としながら、スタイリングして、撮影して、スタイリングして、撮影してって、もう無我夢中でした。

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未だに、刺繍の仕事ってどうやるのが正解なのかよくわかっていない。でも、それがおもしろいのかも・・・知らなすぎて、周りの人に助けてもらいながら、自分のスタイルを作るしかなかったんです。

人類の歴史を受け継ぐ刺繍家でありたい

心がけているのは、刺繍の歴史やルーツを意識しながら制作をすること、でしょうか。私の刺繍は色んな書籍を読み、美術館や博物館でスケッチを取りながら身につけた独学です。もともと民俗学、構造人類学を学んでいたので、技法よりも文化的な役割や歴史背景を知ることが本当に楽しくて。

刺繍という文化を持たない民族はいないと言われるほど、刺繍は各国に根付いています。実際は刺繍をしない民族もいるのですが、あくまで全世界的なものという例えですね。お金持ちお抱えの技術者が作った刺繍も素晴らしいけれど、やはりどの国でも、お母さんが家族のために服を仕立てるという習わしがあって、たいてい、布を作るために植物を栽培するところからやっている。家の仕事をしつつ、残った時間で栽培し、糸を紡ぎ、布を織り、刺繍をするって本当に果てしないです。でも、寒い地域では服がないと、食べないよりも確実に死んでしまうから、今日は疲れたから休むとかは言っていられなかったでしょう。

刺繍ってかわいいし、優雅なイメージを持たれることもあるのですが、もっと人間の根源的な部分で重要な仕事だったんだと思います。時間もかかるし、刺し続けるには相応の筋肉も必要です。目的は布の補強や寒さ対策、魔除けなどですが、それが美しいということにも感動を覚えます。貧しくても、大変でも、人は美しいものを求めて生み出すんですね。

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ただ、知るってことは素晴らしい面もあるけれど、制約でもあり・・・。
刺繍アーティストの中にはあえて技法を学ばないことで、フラットに作品を作りたいという人もたくさんいるし、その気持ち、よーーーくわかるんです。そういう作り方に憧れもある。
だから私は、刺繍作家というより、刺繍という歴史を受け継ぐ刺繍家でありたいなと思いつつも、知ることのこわさというか、そういうものも常に感じています。

今年は複数のプロジェクトに一気にGOサインをもらえた年でした。なので、来年は制作の山場がやってきます・・・。数年かけて立てて来た企画なので、がんばりたいです!

そして、映画の上映会を主催している友人(お酒の席で出会いました。笑)に誘ってもらって続けている「映画を観て 美味しいものを食べて 刺繍をする」イベント、カフェ ド 糸ネマのvol.5が11/26にあります。心を込めて準備しますので、おともだち同士でわいわい遊びに来てください。
[イベント詳細]http://blog.kuroyagishiroyagi.com/?eid=133

12/5には「猫刺繍」の本も出版されます(共著/エクスナレッジ)。12/22から1/16まで西武渋谷A館7Fサンイデーで出版記念展も開催されますので、ぜひお出掛けください。ワークショップ等詳細はブログでご案内します。

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写真:ライブ刺繍・・・音楽の演奏に合わせて即興で刺繍をしました。手元を撮影し、後ろの壁にプロジェクターで映し出しています。

飲み方は移り変わる

莢さんに来はじめた頃は会社員で、仕事の終わりの気分転換にフラッと飲みに来ていました。去年までの3年くらいは新しい人、新しい場所で飲むのが好きで、わーっと外に開けたような飲み方をすることが多かったですね。フリーランスになってからは人に出会える場としても飲みに行っていました。最近はだいぶ落ち着いて来て、親しい人とごく少人数で、きちんと話せる環境で飲む方がしっくり来ます。

以前は辛いことがあったときこそ飲みに出ていましたが、最近はいいことがあったとき、がんばったなと思えたときに飲みに行きます。辛いことはその辛いことが起きた土俵でしか覆せないんだと知ったので。(笑)

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友人と食事をしていて、近くにのんべい横丁のちいさい版みたいな場所を見つけたので、入ってみたんですね。そこにとてもダンディーなおじさまがいらして、話しているうちに私の大好きなボルヘスというアルゼンチンの小説家の翻訳をされている方だとわかり、感激のあまり泣き崩れたことがあります。(笑)

私は翻訳本がとても好きなんです。原文で読めないものを手に取る機会をくれる翻訳家の方をとても尊敬していて。「今度来たらサインした本を持って来てあげるよ」って言ってくださって、「いや、持ってます!」って。笑 ファンだから全部持っているんですけれど、そういうことじゃないよって。うれしすぎて訳が分からなくなっていたんですね。その時取って頂いたツーショット写真は宝物です。

ガージェリーはとても美味しいお酒なので、がんばったな〜という、いい疲れがある時に、ぐびぐびと飲み干すのではなく、味わいながら飲むのが好きです。こちらの莢さんでガージェリーと出会ったのですが、それまでビールが苦手だったのに急にビール党になってしまうほど美味しくて! 7杯飲んだら7杯ガージェリーということもあったくらいです。飲みすぎですね。(笑)

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のんべえ横丁の飲み友達が通りがかって合流、いつもの宴が始まります。

協力: 渋谷のんべえ横丁「莢」

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こころまでを満たすようなビールを届けたい

外飲みを、もっと楽しく、もっと魅力的にしたい

飲み手の人生に寄り添うような存在でありたい

along with your story

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