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「生ビール冷えてます」のウソとホント – ビールサーバーの話

街角でよく見かける「生ビール冷えてます」のポスターや幟旗。今年の夏も暑かったですから、こうしたサインに誘われてお店に引き込まれた方も多かったと思います。でも、ちょっと待ってください。生ビールって、本当にいつでも冷えているのでしょうか。今回はこの「生ビール冷えてます」のウソとホントについて紹介しましょう。

BRULEドラフト

生ビールって何だっけ

いわゆる「生ビール」については、以前、このブログでも詳しく解説しました。
>> 「生」だから美味しいのではない – 徹底解説「生ビール」

皆さんが、「生ビール」と聞いてイメージされるのは、ほとんどの場合、樽詰の生ビールだと思います。そう、ジョッキでドーンと出てくるあのビールですね。しかし、一般には、壜や缶でも「生ビール」と称されているものはいくらでもあります。今回の記事は、あくまでも樽詰ビールに関する話。ですから、正確を期すために、ここからは「樽詰ビール」という表現を使って話を進めます。

お店にある樽詰ビールは冷えていないことが圧倒的

「生ビール冷えてます」なんてサインを見れば、いつでも樽詰ビールが冷えているかのような印象を持ちますね。しかし、樽詰ビールが冷えた状態で保管されているケースは、実は非常に稀なのです。ひどいところになると、真夏、日があたる店頭に樽が山積みになっている場合もあります。
では、どうして樽詰ビールは冷たく飲めるのでしょうか。それは、ビールサーバー、あるいは単にサーバーと呼ばれる樽詰ビール注出器具に秘密があるのです。

そのビールサーバーには、大きく分けて2種類あります。

樽冷式サーバー ~ ホントに冷えてます

まずは品質面で理想的なビールサーバーから紹介しましょう。

樽冷サーバー
上の写真、当社の事務所に置いてあるビールサーバーです。これは、樽が入っている部分が冷蔵庫になっていて樽自体を冷やすタイプで、「樽冷式サーバー」と呼ばれています。
このタイプの最大のメリットは、樽自体を常時冷やせること。ホントに「生ビール冷えてます」の状態で、品質を維持するという観点からは理想的なサーバーなのです。
一方デメリットは、とにかく大きいこと。このタイプの場合、予備の樽も冷やしておく必要がありますから、最低でも2本の樽が入らないといけません。スペースが一番貴重な都市部の飲食店にとって、樽詰ビールのためだけにこれだけ大きな冷蔵庫を置くスペースはなかなか確保できないのが現実です。

瞬冷式サーバー ~ 実は冷えていません

瞬冷サーバー
さて、大きな樽冷式サーバーを置くことができない多くの飲食店ではどうしているのでしょうか。実は、樽詰ビールを瞬間的に冷却するサーバーが用意されているのです。これを「瞬冷式サーバー」と呼んでいます。上の写真の左側がその外観です。大きさは、冷却能力によって様々ですが、当社で主に使っているものは、縦横それぞれ30cm、高さ50cm程度とコンパクトなサイズです。もちろん、皆さんがバーなどで良く見かけるドラフトタワー(上のタイトル写真に見えるやつです)につなぎこむこともできます。
このサーバーの内部には水槽があり、冷凍機で水を冷やして氷を作るようになっています。そして水槽の中に、写真右側のビール用コイルが入っています。このコイルは10m以上の長さがあり、ビールはこのコイルの中を通り抜ける間に周りの氷水で瞬間的に冷却され、出口から出てくる時には飲みごろの温度になっているというわけです。逆に言うと、樽自体が冷えている必要はないのです。これが、「生ビール冷えてます」のウソの部分。

理想は樽冷式サーバーですが・・・

ビールは冷蔵保管することによって、その品質がより良い状態で維持されます。

ですから、ホントに「生ビール冷えてます」の状態である樽冷式サーバーこそ、品質面からは理想的なビールサーバーです。でも現実は厳しく、ほとんどの飲食店で使用されているのは瞬冷式サーバーです。
ガージェリーも、理想を求めれば樽冷式サーバーの使用を勧めるべきなのですが、実際には多くのお取扱い店で瞬冷式サーバーが使われています。であれば、それを前提として、少しでも品質の高いビールを提供していただくためのお手伝いをしなければ・・・ということで、いくつかの小道具を用意したり、取扱い上のお願いをさせてもらったりしています。実はこのあたりが、美味しい樽詰ビールを提供するための秘訣にもなります。皆さんにもじっくりと読んでいただきたい話であり、後日記事を改めて紹介していきます。

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