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「クラフトビール」について考えること

最近よく耳にする言葉「クラフトビール」。巷ではこの言葉についていろいろと定義づけされていますし、その定義に従えば、ガージェリーもたぶんバリバリのクラフトビールなのでしょう。初めて営業に行ったお店で、どういうビール?と聞かれた際に、いわゆるクラフトビールです…と答えると、おそらくそのイメージが一番よく伝わるのだと思います。

しかし… 正直言うと私は、ガージェリーが「クラフトビール」という言葉で分類されることが好きではありません。そもそも「クラフトビール」は「地ビール」を響きのよい言葉に置き換えただけではないか…と思っているものですから、以前のブログ記事で「ガージェリーは地ビールではない」と書いてきた私とすると、素直に受け入れ難いわけです。とは言え、「クラフトビール」は既に市民権を得てきている言葉のようですから、一度自分の頭の中を整理する意味で、思うところを書いてみます。

ホップ投入

「クラフト」に潜む「手作り=美味しい」のイメージ

「クラフト」という言葉を聞くと、多くの人は「手作り」とか「職人」というような言葉をイメージするのではないでしょうか。この「手作り」というのが曲者です。いろいろな食品でも「手作り」と書いてあると、真実はどうあれ、それだけで美味しそうに感じてしまいますね。実際に「クラフトビール」を定義する場合には「手作り」という言葉は出てこないようですが、「クラフトビール」という言葉を創りだした人はそこを意識しているはずだと思うのは私だけでしょうか。「手作り=美味しい」という短絡的なイメージを利用しているのがすっきりしません。

ガージェリーを醸造する際は例えばホップは手作業で投入しますが、これは機械がないから手作業で投入しているだけの話で、それによってガージェリーが美味しくなっているとは考えていません。

某大手メーカー○○○の新商品の缶に「○○○クラフトマンシップ」というのが書いてあり、その中の一つに「香りの決め手となる厳選ホップを一部手で投入」というのがあって、これは驚きました。手で投入する(それも“一部”)のがクラフトマンシップ!? …それはないでしょう。

「手作り」だから美味しいのではない

ガージェリーにはガージェリーだけのこだわりがあります。樽は、他メーカーでは見られないような長期熟成期間を経て、必ず樽詰め翌日にお店にお届けします。年末年始も休みなしです。壜は、壜内熟成で中身の酸化劣化をできる限り防ぐ工夫をしています。いずれも、「コンディションの良さ」を品質のキーワードにしたガージェリーのこだわりであり、皆さんにお届けしたいものです。
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 >> 壜内熟成 – 壜ビールのコンディションを保つ秘策

こうしたこだわりを盛り込んだレシピを作るのが作り手としての私の役割で、その先の現場作業は製造委託先であるエチゴビール社のスタッフに託します。機械を使えるところは機械で、それができないところは手作業で行ってもらいます。さらに、お店に直接クール便で配送するというシステムまで含めてガージェリーのこだわりが完成します。ガージェリーの美味しさの原点は、「手作り」とか「職人」にあるわけではありません。

「クラフト」とは「作り手の思い」ではないだろうか

結局のところ、日本語として多くの人が共有できるイメージで「クラフト」という言葉を使うのであれば、巷で使われている「クラフトビール」という言葉の範疇に入るべきビールは、作り手が伝えたいものがはっきりしている、作り手のこだわりが明確である、そういった「作り手の思い」とも言うべきものが見えるビールということではないだろうかと思っています。決して、ビールのスタイルであったり、規模の大小であったり、そういうことで定義、分類されるものではないと思います。

「作り手の思い」が明確に伝わるのであれば大手の大量生産ビールであっても「クラフトビール」と呼んでいいでしょう。一方、生産量が少ないだけのビールや、珍しい原料を使っただけのビール、独特なフレーバーを付与しただけのビールを、そのことだけで「クラフトビール」と呼ぶのは違う… そんな風に考えています。

また、こういう見方もできます。
大手メーカーの極めて高い技術力を背景にした品質の高さには、その他のビールメーカーが束になってかかっても太刀打ちできるものではありません。「高品質の少量生産ビール」を作ることは大手メーカーにとっては朝飯前でしょう。
しかし、頻繁に異動があり、偉い人が必ず口出しし、大手の目線に合った採算ベースに乗らなければすぐに撤退を余儀なくされる、そうした組織の縛りの中で、本当の意味での「クラフト」なビールを創り出すのは至難の業であろうと思います。

要は、大手の大量生産ビールとそれ以外のビールを何か一つの言葉で分けようとするから無理が生じるのであって、そんな区分はもう止めようではありませんか。 …これが一番言いたかったことかもしれません。

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