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麦芽100%の意味と副原料の価値 – ビール原料の選び方

シリーズ「プレミアムビールの真実」の第2回。

前回の記事で、「麦芽100%だから高級というわけではない」と書きました。麦芽は決して高い原料ではないということです。では麦芽100%というのはイメージだけの問題なのかというと、もちろんそうではありません。麦芽100%にするにはそれなりの意味があります。今回はそのあたりを考えていきたいと思います。

モルト

副原料にも大事な役割がある

日本のビールはこれまで、より好ましい香味を造り出すため(ここが大事!)、副原料として米やコーンを使うことが一般的でした。これは、頑固なドイツを除けば世界的にも珍しいことではなく、それぞれの国の嗜好に合った様々な副原料が使われています。
あまりにも当たり前のことですが、ビールの香味は原料に何を使うかによって大きく左右されます。一般的に、麦芽を多く使った方が香味が濃くなり、米やコーンを使った方がすっきりした香味になります。日本人はすっきりしたビールを好む方が多いですから、大手メーカーの主要なブランドは、高価な原料である米やコーンを副原料として使い、より好まれるすっきりした香味を実現してきたのです。

副原料はコストを下げるために使われているのではなく、香味形成に大事な役割をはたしていることを忘れないでください。

麦芽100%の真実

前述の通り、原料を麦芽100%にしたビールは、一般的にその味わいが深く、濃く、広がりが出てきます。すっきりのど越しを楽しむというよりは、その味わいをじっくりと楽しむというスタイルのビールになります。
ここに麦芽100%にする意味があります。 が、それ以上でも以下でもありません。

麦芽100%という原料配合はプレミアムなのではなく、あくまでも特定のビール香味を作り出すための技術的選択肢の一つなのだと考えています。

麦芽100%を選択した目的は何なのか、その結果としての香味がプレミアムを支払うに値するものなのかどうか、それを見極めるべきです。
ところが、単純に「麦芽100%だから高級」というイメージが出来上がってしまったため、今では何でもかんでも麦芽100%にしてイメージを良くしようという流れがあるように感じます。これは、香味の設計にポリシーが感じられず、とても残念なことです。このあたりは、純米酒(醸造アルコールを添加していない酒)が良いイメージで受け入れられている日本酒と共通するところがあります。

付加価値は何なのか、それを分かってプレミアムを支払おう

プレミアムビールは通常のビールよりも価格が高いものです。割高な金額、つまりプレミアムを支払うからにはそれに見合った付加価値を期待しているということになります。

先に書いたように、麦芽の価格は決して高くありません。繰り返しますが、コスト面から言えば、麦芽100%というだけではプレミアムを支払う価値はありません。事実、麦芽100%でも通常価格のビールがあります。この写真のビールなんかがそうです。最近のリニューアルで麦芽100%にした意図は分かりませんが、少なくとも価格設定は理解できます。

一番搾り表示
麦芽100%というイメージに付加価値を見出してプレミアムを支払うのか、そこに疑問を呈するのか、改めて考えていただきたいと思います。

さて、今回はここまで。
次回は、いよいよ原料価格以外の面からプレミアムビールの付加価値を考えてみたいと思います。

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