-"Animated Tales of the World"とはどのようなプロジェクトなのですか?
S4C(エスフォーシー)っていう、イギリスのウェールズ地方にある国営放送局がプロデュースしているんですけど、世界各国のアニメーターが全部で 100カ国くらいの子供たちに向けて作品を作り、それぞれの国の言語に訳して放送するプロジェクトです。今回は3回目で13本作ったんですけど、その中 の1本に初めて日本から参加させて貰いました。脚本・監督・キャラクターデザインと粘土アニメーションを担当させてもらって。
―そうすると何百時間とかかる訳ですよね?
もう計算出来ないくらいかかりました。企画から数えると丸2年、アニメ
ーションの撮影だけでも5ヶ月半くらいかかってますね。ちょっとずつ動かしては、チェックして撮って。撮影の間は一日も休みなしで、朝10時から夜中の4時くらいまでは普通にやってましたし。本当に、「ギネスに挑戦!」って思ってやってました。(笑)。
―アニメーションもいろいろな手法があると思うのですが、今回粘土を素材として選んだ理由は何ですか?
もともとお人形が好きで一番やりやすいのが粘土だったということもありますが、今回のお話には粘土が一番合うんじゃないかなと思ったんです。海外の子供たちに日本の風土というか、日本的なものを伝えるという目的があったんで、暖かさとか泥臭さが伝わりやすいと思って。粘土のアニメーションの面白さってちょっとした表情を出せるところで、ほっぺたの盛り上がりをむにゅにゅにゅーって変えるだけで表情が変わったりするんです。その点についてはセルアニメーションよりも向いてますね。顔の表情は自分の中でも表現したいところだったので、頑張りました。海外の作品もいろんな手法を使っていて見てみると面白いですよ。今回のサードシリーズに関していうとセルのアニメーションが多かったですけど、人形のアニメーションもCGもありましたし、あとセルと一口に言っても描きのタッチが面白いのもあったし、水墨画のようなテイストのものもあって。
ー何がきっかけでアニメーションを始めたのですか?
もともとは地元の徳島でデザイン事務所に勤めてて、デザイナーだったん
です。その頃、徳島になぜかアニメーション学校が出来たんですよ。いわゆるカルチャーセンターの講座の1つだったんですけれど、講師の先生方は東京で第一線でやっていらっしゃるアニメーターとか映像作家の方ばかりで、「勉強するチャンスかもしれない」と思って仕事しながら夜の部に行かせてもらうようになりまして。最初はアニメーションが自分の中の表現だとは思ってなかったんです。それで学校に行ってみたら「アニメーションって総合芸術だ!」ってことに気付いて。脚本から、絵から、人形も、音楽も、全部自分で出来る。すごい!って思って虜になりまして。それで数年後に、つても何もないのに仕事辞めて東京出て来ちゃった。ほんとに何もなくて、食べられないからいろいろバイトして、たまーにアニメーションのアシスタントに呼んでもらって。そういうのをやりつつ、ちょうど一年くらい経った時に縁あって森まさあきさんのアシスタントになって。それがきっかけです。
―そこまでこぐまさんを突き動かしたのは何だったのでしょうか?
そうですねぇ、私の場合はアニメーションは自分の自己表現でもあるんだけど、恩返しの方法でもあるんです。母子家庭で育ってきたので、家族ではない、血 のつながりのない人にすごく助けられて、「ホンマにいろんな人に助けてもらって私は生きてこられたな」って子供の頃から思ってて。自分がそういう風に助 けてもらった事を他の人にも返して行きたいって思っていた訳です。その恩返しの方法として、私がいろんな人から得たものを、「いろんな人がいるからこそ生きて行ける」ということを、子供たちにも伝えたい。「大丈夫だ よ」ってことを言いたい、と思っていて。人生苦行だし、辛い事とか悲しい事いっぱいあるよ。でも絶対良いこともあるし、ドキドキしたり楽しい事・ステキ な事もいっぱいあるから、頑張って生きようよ、ってね。
-それでは「雪渡り」でこぐまさんの夢が叶ったのですね?
"Animated Tales of the World"に参加する事になった時は、「夢かな、
うそー!!!」って感じでした。さっきお話したみたいに子供たちのため
の作品を作りたいと思って東京に出て来たので、ずーっとそう思っていた
ので。でも日本にもすごいアニメーション作家さんはいっぱいいらっしゃ
るし、プロデューサーの方に「私は本当に子供たちの為の作品を作りたい
って心から思って生きているけど、ぶっちゃけ、すごい賭けですよ。もっ
と素晴らしい方沢山いるのに、良いんですか?」って伺って、でも私のそ
ういう表現したいっていう気持ちを酌んで下さって、大賭けに出て下さっ
たんですよね。だから「じゃあやらせて頂きます!」って言って。その間仕事が出来なくなる訳ですからその不安もあったんですけど、それよりこういう作品をお金儲け抜きで、本当に子供のために、それもこんな大きなプロジェクトに参加して作れるなんて、一生の中であるかないかの事だ、って思ってもう死にものぐるいでやりました。今のアニメーションって、所謂ジャパニメーションなどの商業的なものはすごい一杯あるし、すごい数のアニメーションをテレビでやってるじゃないですか。夜中もいろんなのやってたりとか。でも純粋に子供のための、情緒を育てて行くようなものがないなって、思ってたんですね。やっぱりお金儲けしないと、っていうのがあって、それは私も仕事しているからすごく分かるんですけど、でも子供のために何か残していくとか、活動して行くということはすごく大事なことだと思うんです。
-原作に宮澤賢治の「雪渡り」を選んだのは何故ですか?
雪渡りは、作品を作るにあたっていろんな原作をチョイスしていた中で、
私が宮澤さんのものを読んでて「これだー!」って思ったんです。私の勝
手な解釈な んですけど、元々自分が子供たちに伝えたいと思っていたメッセージが雪渡りにはあると思ったんですね。雪渡りは狐と人間の話しなんですけど、お互いが理 解し認め合って、その上で一緒に生きて行くという事を伝えていると思ったんですね。だから、これは絶対にやりたいと。自分が表現したい事はこの作品の中 にあると思って選びました。子供たちには、世の中にはいろんな人がいるんだって事を知って欲しいんですよ。人との出会いが、どんなに貴重なことかを知って欲しいし、世界中にはいろ んな国があっていろんな文化があり、その中にいろんな人がいることを知らないと駄目なんじゃないかな、って。理解する心、自分の考え
を押し付けるんじゃ なくて「こういう人もいるんだな」って考え・思える強さを身につけてくれたらなぁって。だからこそいろんなことをいっぱい経験して、考えて感じて生きて 行ってもらえたらなって思うんです。宮澤賢治さんの作品って、そういう大きなものがあると思うんですよ。夢や理想を持つことってやっぱりすごい大切だと 思うんですよね。そっから始まると思うんで、いろんな事が。子供たちには、そういうものを大事にして欲しいなって思ってます。
徳島県立名西高等学校 芸術科(美術)卒業。3年程徳島でグラフィックデザイナーとして働き、その後アニメーションを極める為、上京。(有)モリクラフトアニメーションに6年間在籍し、森まさあき氏に師事。99年よりフリーとなる。現在は、立体アニメーションの仕事の他、人形制作・イラストなどを手掛ける。日本アニメーション協会(JAA)会員。 東京都在住。
受賞歴
2004年 「雪渡り」がeMotion Film festival コンペティション部門に入選。
2003年 「Fairy Land」が第6回文化庁メディア芸術祭アニメーション部門 審査委員会推薦作品に入選。
2002年 「Fairy Land」がオランダ国際アニメーションフェスティバル コンペティション部門に入選(カテゴリー:music videos)
2002年 「Fairy Land」がスカパー「東京ホットインディーズ」第8回コンテストで優秀バンド賞を受賞
お問合せ
atelier_kids@yahoo.co.jp
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