-- 個展にはどのような作品を出品されているのですか?
浴衣、手ぬぐい、掛け軸、ガラスの器、平面の作品などです。絵は原寸で描いたものを大きな和紙に刷りだしたものや、飛び出る絵本のような紙細工を作っています。
作品は全て私がデザインしますし、素材もひっぱってきますし、絵に合わせてテーマも決めますが、制作の段階では職人さんに手伝ってもらっています。日本って着物にせよ何にせよ、すごい分業制なんですよ。型を作る人は型だけ、絵を描く人は絵だけ、蒸す人は蒸すだけ、仕立てる人は仕立てだけ。なんでそうなってるかっていうとクオリティを高めたいっていう意識があるからで、1から10まで全部自分でやろうと思ったら、多分100回生きても無理なんですよね。だから、1人の人がある部分のスペシャリストになって、分業制で全体を仕上げて行くんです。
私はアーティストよりも職人さんっていう言葉にリスペクトがあって、むしろ彼らの方が真摯に自分のゴールを決めて、達成出来るところまでやっていると思うんです。有名になりたいとか、アーティストと呼ばれたい、ということじゃなくて、良いものを作りたい、っていうゴールがはっきりしているっていう意味では、ほんとの意味でのクリエイターだと思います。
作った人が何を考えて作ったのかということが伝わるもの、「良く出来てるな、これ」とか、「綺麗だな」と思うものってコミュニケーションが成り立っていて、そういうものは捨てられないし、ずっと居続けるものだと思うんですよね。
なんか、やっぱり、ちゃんとしたものを作るのが究極の贅沢だなって思うんです。すごい考え抜いて作る訳じゃないですか。それぞれの部位にそれぞれスペシャリストの叡智がこもっているとしたら、例えば掛け軸の貼り込みだけで10年とか20年の修練を必要とする職人技なんで、最終的には何人もの人の全人生が一個のモノになって出来上がっている。そう思うと、すごい贅沢だなって感じるんです。
-- 若手アーティストで掛け軸を作る方は珍しいと思うのですが、
何故掛け軸 というフォーマットを選んだのですか?
掛け軸自体が小宇宙で、全部のパーツが絵と呼応してないと面白さが出ない。そこが好きなんです。それは日本の持ってる素晴らしいコミュニケーションメソッドで、こんなコンパクトに畳める中に、宇宙があって、なぞなぞがあって、とんちがあって、しかも時差があって響いて来る。一発で分からない面白さ、スローフードじゃないけどスローアートみたいなところがあるんですよ。そこがやっぱりすごいし、面白いなって私は小さい頃から思っていて。
この間ラフォーレで、実験的にターゲットをうんと低い10代とか20代の子に合わせて個展をやらせてもらって、その中で白雪姫の「世界で一番美しいのはだあれ?」っていう作品を作ったんですけど、彼女たちの文化周波数に合わせればその表具のココロとか、試み、とんちだったり、シャレだったりっていうのが、やっぱりみんな日本人のDNAを持っているんで、100 % 通じるんですよね。だからすごく「欲しいー」って言ってくれてたし、意味も分かってくれて。
日本の美の面白いところの1つとして、ディテールに病的なほどまでに特化しているというのが挙げられると思います。それぞれに「やられた」「よく考えてるな」「細かい細工してるな」っていう日本人ならではのすごく近視眼的な魅力があると思うんです。ただ単に私がそれに魅入られているだけなんですけど(笑)。
-- ミヤケさんが感じている日本人の魅力とはどのようなものですか?
日本人の美しさっていうのはセンスなんですよね。綺麗な人はいっぱいいるよ、でもその人がどれだけあか抜けてるかがその人の美しさだ、という文化が日本にはあると思うんです。
たとえば着物は背中に帯があり、メインの絵が入りますよね。着ている本人を美しく見せようと思ったら顔が美しく見えるようにするはずで、わざわざ顔を避けて後ろに絵を付けたりなんかしないですよね。それなのに背中に絵があるということは、明らかに帯自体が絵画であり、着物自体が作品なんです。その作品の選び方、つまりその人が親から貰ったものや階級や顔や肉体的な美しさじゃなくて、自分が作り出したもの、身につけたものを背中で見せるっていう生き様が日本人的で、すごい、すごいなーって思います。粋だったり、いとをかしもそうですけど、センスを競う文化っていうことがすごく面白いと思っていて、たとえ貧乏で不細工だったとしても後天的に身につけたその人の感受性やセンスの良さで完全に名誉挽回できる。そういう人間的な文化を持ってる。すごく文化的だし、すごく先進国だと思います。
日本はだれもが美術的な能力やものを作る能力にある程度長けてるんで、そういう技術があふれてて、ものを作ったり、クリエイションする力はタダで付加価値でしかない、という風潮があります。ついでにデザインしてよ、みたいな意識があって、技術とかソフトとか、目に見えない部分が対価交換されないシステムになってる、すごく特殊な国なんです。日本の当たり前は決して当たり前じゃない、っていうことに早く気がついて欲しいですね。
ほんとに、世界ですぐにでも通用するような人がいっぱいいるのになんか勿体ないなと思います。これだけ芸術の層が厚いし、ファッションの層が厚いし、マンガ文化の層が厚いし、全てにおいてソフト大国として世界から注目されているのは不思議じゃないと思っていて、むしろ気がつくのが遅すぎる、っていうのが私の持論なんです
横浜市中区生まれ、2002年フリーになり作家活動を開始。日本人が本来もっている感覚に根ざしながら、過去の洒落・エスプリを現代に翻訳しなおした作品が注目されているアーティスト。表具で2003年11月第2回アミューズ・アーティスト(芸術家)オーディションin京都審査員特別賞 などを受賞。独自の古典を生かしながら現代にアレンジした着物・浴衣の制作では、BSジャパン『ハッピーデザイン』浴衣制作において視聴者人気 投票1位をとるなど、洒落のきいた作品への支持は高い。伝統的なフィールドにとどまらず、個展「ミヤケマイルーム」(原宿ラフォーレラプネット)では和ポップでガーリィーな世界感を表現している。
2004年7月よりユナイテッドアローズ グリーンレーベルとダブルネームで子供服を発表。2004年 COOL JAPAN BNN新社の現代アートの本にも
フューチャーされている。2004年8月7日〜18日個展開催。(東急文化村ギャラリー)
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